幸せにはなれない

幸せにはなれない

彼女とは話すのも面倒になり、連絡はあったが家の事情でしばらく会えないと伝えた。
このまま自然消滅して、彼女のことは忘れてしまおうと思った。

 

しかし、悲劇はまだ続いた。
彼女と友達が俺の家にやってきた。
正直言うと上げたくなかったが、彼女が泣きながら話した。

 

「私、あなたのことが忘れられなくて…」

 

人を裏切っておいて何を言い出すんだと腹が立った。
彼女は、どんな方法を使ってでも俺の信用を取り戻したいと言い出した。
こんなに人を好きになったことは初めてで、風俗も辞めようと思っていたらしい。
でも、お店の都合でなかなか辞められず、
そんな時に常連が俺の友達の中にいたことを知り、負の連鎖から抜け出せなくなったという。

 

友達が一緒についてきた理由が分からないが、なぜか俺をなだめる役で一緒に来たらしい。
「彼女の気持ちを汲んでやれ」となぜか上から目線で言われ、益々気分が悪くなった。

 

俺は完全に立ち直れなくなり、故郷の親を呼んだ。
病院に連れて行かれて、うつ病だと診断された。
大学は休学し、実家にて静養することになった。

 

それからの3年間、人を信用出来るようになるまでが非常に時間が掛かった。
今まで仲良くしていた友達も信用することが出来ず、女性不信にもなった。
でも、両親と病院の先生のお陰で、漸く毒の状態から脱することが出来た。
両親には大学はやめてしまってもいいと言われたが、目的があって入学した学校だった。
しかし、まだアイツがいる学校に通いたくはなかった。
俺は親に頭を下げてもう一度受験をさせてもらった。
今度は勉学だけに励むつもりで大学に通うことを決めた。

 

新たなる大学に通い始めて1年が経った時、偶然入店したカフェで彼女と再会した。
俺はあの時の俺ではなかった。
彼女に会ってもなんとも思わなかったし、苦しくなることもなかった。
俺は客としてコーヒーをオーダーし、彼女は店員としてオーダーを受け取った。

 

空白の3年間に何があったかは知らないが、彼女の顔には美しさが感じられなかった。
不幸の相が出ているというのだろうか?
俺が知っている彼女の輝きはなかった。
人としての道を外すと、幸せにはなれないのだなと思った。
不幸を嘲笑う訳じゃないが、人を裏切ってはいけないのだということを学んだ。